内藤とうがらしプロジェクトの最終目標はなにか? 後編  (新宿区・内藤とうがらしプロジェクト) 

内藤とうがらしプロジェクトの最終目標はなにか? 後編  (新宿区・内藤とうがらしプロジェクト) 

agri.TOKYO編集部では、内藤とうがらしプロジェクトリーダーの成田重行氏を直撃取材しました。全3回にわたってその活動をご紹介しています。今回が最終回です。

前編中編はこちらから。

「地域おこしを大都会新宿で」~プロジェクト代表・成田さんの想いとは~
①なぜ新宿の街に関わることになったのか?

成田氏は、常務としてオムロン株式会社に勤め、企業がグローバル展開を進む様子を肌で見てきたといいます。定年後はその正反対となるローカルに着目し、「大きいことは良いことだ」ではなく「小さいことは面白い」という世界に身をおいてきました。2001年に代表取締役社長に就任した株式会社ナルコーポレーションでは、全国津々浦々のおよそ30の小さな街で地域づくりに取り組んできました。代表的なものは宮古島の「雪塩」で、差別化が難しい「塩」の分野で新たなブランドを打ち立てました。

会社は事務所を新宿においていたものの、成田氏自身が新宿の街に関わることはほとんどありませんでした。転機となったのは、2008年に当時の区長ほか地元の人たちと交流をもったときでした。「あなたは全国で地域づくりをやっていますけど、足元はなにもやっていませんよね。新宿にはビルの下にも住んでいる人がいる。新宿もやってください。」地元の人にそう言われるまで、過疎化・高齢化が進んだ田舎には魅力がある一方で、大都会には魅力はないと思っていました。しかしながら、少し考えてみれば、新宿にも「ローカル」があると気づいたのです。

成田氏が事務所を新宿に構えた理由は、交通の便が良いことや、どこに行っても誰かがいるという、新宿の街の「光」の部分に惹かれたことだけでした。これは、ビジネスをしている人としての当たり前の感覚でした。しかも、新宿の街は再開発が進み、住むのではなく、ビジネスの場所として利用する人たちにとって、ますます魅力的になっていきます。しかしながら、そこにはなにかの関係でたまたま住むことになった人々が暮らしており、ローカルな生活があります。大都会の恩恵をほとんど受けることのできない人たちがいます。これが、全国の田舎で地域づくりを行ってきた成田氏自身の気づきでした。

笑顔で語る成田氏。その人柄が、新宿の様々な人達を巻き込む原動力になっているのかもしれない。
②地域づくりの5つのセオリー

成田氏は、全国で地域づくりを行う中で体系づけた5つのセオリーに基づき、内藤とうがらしプロジェクトを舵取りしています。そのセオリーとは、唯一性、物語性、納得性、事業性、継続性の5つです。

唯一性(オリジナリティ)とは、「その地域とは何か」ということです。これは地域づくりの根となる部分です。唯一性をないがしろにして、単に「B級グルメが流行っているからご当地焼きそばを作ろう」などと考えてはいけません。図書館や小学校、お年寄りのお話を集め、何百年前にまで遡ってその地域の歴史や住んでいた人々、食べていたものなどを調べる必要があります。内藤とうがらしプロジェクトで言えば、新宿内藤町がとうがらしの大産地であったことや、江戸の市民がとうがらしを好んで食べていたことなどが、歴史に紐付いた唯一性の源流となっています。

物語性とは、唯一性を周囲の第三者に説明する方法のことです。「何年に」「誰が」「何を」したなどの具体的なエピソードだけではなく、それと現在に残る地名などとが結びつくことが必要です。また、老若男女誰でも分かるストーリーであることが望ましいです。内藤とうがらしの場合は、江戸時代盛んに育てられており収穫期には新宿内藤町一帯を真っ赤に染めていたことや、江戸の街でそば屋台の七味として提供されて、庶民がその香りを楽しみながらそばをかきこんでいたことなどが挙げられます。これらは、地名に結びついたわかりやすいエピソードとなっています。

納得性とは、地域に住む誰もが納得できるプロジェクトにするということです。市町村には様々な立場や考え方、好みの人が住んでいます。例えば「うどんをテーマに町おこしをしよう」と考えたとしても、「ラーメンの方が良い」「焼きそばのほうが良い」などの意見が出て、まとまらないかもしれません。このような際に、いかに全員に納得してもらうかが課題となります。内藤とうがらしプロジェクトでは、とうがらしについて調べてまとめた資料を作成し、それを見てもらう中で反対が起こらなかったため、テーマとして決定したといいます。このような納得感のある決定のためには、前述した唯一性・物語性がしっかりと明示されることが不可欠です。

事業性とは、ビジネスとして継続的に商品・サービスが売れるようにすることです。どんなに唯一性があっても、物語性が高くても、地域で納得されていても、事業として存続することができなければあっという間に終わってしまいます。今の時代が求めているニーズを的確に把握し、そのなかで地域づくりの取り組みをしなければなりません。成田氏は健康・美容・環境などが現代のテーマであると考えており、内藤とうがらしという栄養成分を多く含んだ野菜をテーマとすることは、この点においても望ましいことです。

継続性とは、プロジェクトが一発勝負ではなく、10年・20年・50年と続くかということです。継続性をもたせるためには、いままでの取り組みの維持・向上だけではなく、2割程度は革新的なことを取り入れていかなければなりません。また、行政などからの補助金・助成金は、その資金ありきになってしまいかねないため、受け取らないことが望ましいです。内藤とうがらしプロジェクトでも、後援は受けているものの、協賛や助成金といった資金は一切受け取っていないといいます。

成田氏と、学習院女子大学国際文化交流学部の品川ゼミで内藤とうがらしの研究を行っている「とうがらし女子」のお二人。
内藤とうがらしプロジェクトの最終目標~プロジェクトの最終目標はなにか~

内藤とうがらしプロジェクトは、とうがらしを1つのテーマとして新宿の街に暮らす人々の意識を変えていき、それと同時に新宿の街のイメージも変えていくことを目指しています。これは終わりのない問題です。しかし着実にやっていきたいと考えています。非日常的な一過性のイベントではなく、地域の日常的な取り組みとして、地域のたくさんの「普通のお店」に継続的に人が訪れる仕組みをつくっていくことで、エネルギーロスを抑えながら地域を変えていきたいといいます。
内藤とうがらしプロジェクトが向き合っている課題は、新宿だけの話ではありません。日本の、いや世界のあらゆる都市や地方の街々に、そこに住んでいる人たちがおり、その街に誇りを持てない、つながりをつくれない人たちがいます。このような街の影の部分に光をあて、テーマをもって地域を変えていくことは、今後、変化する社会の中でますます重要になると考えられます。内藤とうがらしプロジェクトは、その重要性と可能性をわたしたちに教えてくれています。

天に向かって実る内藤とうがらし。白くて可憐な花にもご注目。今後も、内藤とうがらしプロジェクトの進化から目が離せない!
内藤とうがらしプロジェクト プロフィール

公式ホームページ:https://naito-togarashi.tokyo
公式Facebook:https://www.facebook.com/togarashinet/?m2w

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