DeST2018取材レポート② 農の力で多摩は世界一住みたい都市になる!(小野淳さん)

DeST2018取材レポート② 農の力で多摩は世界一住みたい都市になる!(小野淳さん)

2018年12月8日、明星大学デザインセッション多摩(DeST)2018が開催されました。ぽてともっとのメンバーがセッションに参加しながら、その様子やお話の内容をレポートします。①・③・④の記事は、以下からご覧ください。

① 農×政治!?~時代の変化に対応するのではなく、変化を作り出せ!~(高橋金一さん)
② 農の力で多摩は世界一住みたい都市になる!(小野淳さん)
③ 新規就農のススメ!(舩木翔平さん)・暮らしと農の近い町国分寺(南部良太さん)
④ 地域×デザイン!(江藤梢さん)・生ゴミを活用したコミュニティー農園(佐藤美千代さん)

小野淳さんプロフィール

NPO法人「くにたち農園の会」理事長。国立市のコミュニティ農園である「くにたち はたけんぼ」や「子育て古民家つちのこや」などを拠点に幅広い農のサービスを提供しています。今回のトークセッションでは、都市の農地が多面的な機能を持ち始めた現代で、農地をどう活用して魅力的なまちづくりを行なっていくべきかについての議論をお話しいただきました。

小野さんが運営する「くにたち はたけんぼ」の取材記事はこちらから!

世界でも特殊な「東京・多摩地域の都市農業」

小野さんのテーマは「農の力で多摩は世界一住みたい都市になる」でした。そこでまず、多摩地区は都市であるという定義付けをされました。というのも、日本の夜の明るさを衛星から見ると、どの国よりも輝いています。これは世界的に見て日本全体が都市であると言えることになるそうです。では、都市農業とはどのようなものでしょうか。小野さんは都市の中で都市と調和しつつ存在する農業を,都市の周辺の近郊農業ととくに区別して都市農業ということを定義しています。これらのことから、多摩地区では都市農業が行われているということになります。その多摩地区では近年、都市化が進んでいる地区の1つとなっています。毎年のように畑がなくなり、風景が変わるという破壊と創造が繰り返されているようです。

しかし、小野さんは多摩地区にはまだまだ活用できる土地が溢れているとおっしゃいました。ある調査によれば、東京都区内では全面積の1パーセントの農地しか残っていないのに対し、多摩地区では私たちが暮らす空間のうちの10パーセントもの農地が残っているそうです。今、世界では屋上などの人工物の上に農地を作り出すアーバンアグリカルチャーが多く見られますが、多摩地区では人工物の上ではなく、守られてきた土地の上に農地があります。つまり、多摩地区は世界的にみても稀有な場所であり、数百年の歴史・文化とともに農が残る都市であることが言えます。

コミュニティ農園「くにたち はたけんぼ」

そこで小野さんは都市農地の多面的機能を生かした活用モデルの一環となるコミュニティ農園事業として、「くにたち はたけんぼ」を展開しておられます。「くにたち はたけんぼ」は、東京都国立市谷保にあり、小さな子どもからおとしよりまで、田んぼや畑をたのしみたい・守り育てたい人が参加できる、新しい形の農園です。これはただ単に農作業をするための施設ではなく、遊びや学びの場、交流の場やビジネスの場として、都市ならではの新しい関わりが生まれる場所です。東京の街に、ぽっかりと残された畑と田んぼを有効活用し、都市における農業の可能性を広げていくことをコンセプトに運営されています。

このコンセプトを実現するうえで大事なのが「農の力」です。「農の力」と言われても私たちにはあまりピンと来ません。イメージとしては農=食べ物を生産する、というところでしょうか。小野さんがおっしゃるには、「農の力」には5つ側面があるようです。それは「結」「学」「癒」「遊」「美」であるそうです。「結」は助け合い・相互扶助、「学」は我々自身を知ること、「癒」は農作業における人々のストレスの軽減、「遊」は昔の子供のように畑を遊び場とすること、「美」は植木や花などを愛でるということを表します。

「くにたち はたけんぼ」ではこの中でも「結」の部分に力を入れて、みんなで育てて、みんなで食べるということを大切にしています。これは昔の里山的な場所であると小野さんは考えています。古来の里山は共同で管理されており、身近にあるもので持続可能性を生み出していました。里山は「農作物」「土壌」「地縁」「生き物」「食文化」が密接に結びついた場所だったのです。

小野さんは「田畑は白紙のキャンバス」と位置付けています。毎年新しいものを生み出し、収穫し、更地に戻すということを繰り返すためです。しかし、いきなり農業を体験するのは敷居が高いという人もいるため、古民家やゲストハウスを利用し、住宅と畑をセットで提供してもらえるよう「つちのこや」を展開しています。農と食・暮らしを結びつけたサービスを提供することが今の都市農業的なあり方であると言えます。「つちのこや」では、谷保の里山風景広がる田んぼや畑の恵まれた環境を活用しながら、地域の子育てを応援する活動を行っています。月曜日、火曜日、木曜日で実施されているつちのこ食堂では旬のお魚や野菜を使って丁寧につくられたごはんを提供しています。金曜日に実施されているつちのこ学舎では放課後、大学生のお兄さんやお姉さんに勉強をみてもらい、お話しして、おやつを食べて帰る、子どもの学びの居場所となっています。

どんな都市に住みたいか

最後に、これからの多摩地区を考えるうえでは、自分たち一人ひとりがどんな都市に住みたいかを考える必要があるとおっしゃっていました。小野さんは、都市農業の取り組みと都市化のバランスを考えたうえで、自分たちが思い描くものを形にして、自分たち自身が世界一住みたい都市を作れば良いのではないかと語っていました。