都市農家から広がる地域の輪 (国分寺市・清水農園)

都市農家から広がる地域の輪 (国分寺市・清水農園)

現代の日本社会は人と人との繋がりが希薄になりつつあると言われています。このような状況を改善しようと様々な試みが行われている中で、東京都国分寺市では都市農地を介して地域の人々の繋がりを強くする取り組みが行われています。今回は、そのような取り組みを積極的に行っている農家の一つである清水農園の清水雄一郎さんを取材しました。

江戸時代の新田開発にルーツ

清水農園は東京都国分寺市の北の端、小平市との市境付近に位置しており、1町2反(1.2ha)ほどの面積です。農家としては清水さんで5代目であり、それ以前のルーツを辿ることは難しいものの、耕作している農地自体は江戸時代に開墾されたものだそうです。当時、江戸市中の人口の急増に伴う水需要を支えるために玉川上水が建設され、それに伴い荒野であった武蔵野の台地に農業用水網が整備されました。清水農園が面する五日市街道沿いを流れる砂川用水もその一つで、これにより新田開発が可能になったのです。新田開発以降に開拓された農地は街道に面して短冊状につくられたため、今でもその名残が周囲の畑や住宅地によく見られます。

清水農園周辺の農地の様子。奥に左右に連なる木々が玉川上水です。
(出典:Google Earthよりぽてともっと作成。)

清水農園では、基本的に清水さんとそのご家族計四名が働いています。加えて、畑の近くにある直売所で販売を行う方が3名、国分寺市のプログラム「市民農業大学」を修了した援農ボランティアの方3名がお一人ずつ週一回・半日の持ち回りで畑作業の手伝いをされています。

地域の方との会話が聞こえる直売所

さて、冒頭でも述べた通り、清水農園では地域との関わりを大切にして運営を行っています。そこで、まず注目していただきたいのが、畑のすぐ傍にある直売所です。ここでは主に畑で栽培された野菜や清水さんと繋がりを持つ農家の方々から送られてきた野菜・果物を扱っており、清水農園の野菜の主たる販売先となっています。この直売所は約20年前に清水さんのお母様が始めました。当時、出荷先は主に市場でしたが、直売所を開設したことによって、販売形態が大きく変わったといいます。

清水農園の直売所。カラフルな野菜が並んでいます。

清水さんは、直売所の運営にあたって、多種多様な野菜を取り揃え、年間を通して品切れを起こさないようにすることを心がけています。これにより、お客さんはいつでも、スーパーなどであまり取り扱ってない野菜も含めた様々な種類の野菜が買えるのです。私が取材に行った時も大根やニンジン、イチゴなどの色とりどりの野菜が販売されていて、とても新鮮で立派な野菜を販売しているのだなと思いました。

直売所では、野菜を買いに来るお客さんと直接やり取りすることも多いそうです。お客さんとの会話の中では、直売所で買った野菜についての感想をもらったり、季節の野菜を使ったおすすめの調理方法を紹介したりすることもあるのだとか。一軒の直売所が、地元の方々とのコミュニケーションの場となっているのです。

なお、清水農園の野菜は、ここで紹介した農園併設の直売所のほか、地元野菜の集荷・流通を行うベンチャー企業「エマリコくにたち」が運営する直売所「にしこくマルシェ」でも購入することができます。また、国分寺野菜の流通を行う「こくベジ」の配送網を通じて、国分寺市内の複数のレストラン・カフェでも楽しむことができます。

オータムポエム(アスパラ菜)。生のまま花を食べてみると、ほんのり甘みがありました。

多様な農の姿を伝えるイベント・情報発信

もう一つ注目していただきたいのが、農をテーマにしたイベントや、畑や作物の様子を伝える情報発信を積極的に行っているということです。イベント企画は清水農園だけでなく、清水さんの知人や国分寺市に住んでいるクリエイターの方々と協力して行っています。数年前に参加した、大学教授やクリエイターの卵を集めた勉強会で、イベント企画を行う仲間の繋がりが出来たことをきっかけとして始めたそうです。例えば最近では、2018年秋に「清水農園秋祭り」を開催しました。このイベントは清水さんと繋がりのあるコーヒー屋、カレー屋、木工屋、陶芸家などが企画し、周辺住民へのポスティングなどをして周知しました。当日には約100人ものお客さんが集まり盛り上がりを見せたそうです。

畑は道の左右にまっすぐ広がっています。

また清水さんは、たましん(多摩信用金庫)主催の「たまネクストファーマーズプログラム」でブランディングを学んだことを活かして、直売所のお客さんや地域の方々に向けてFacebook上で情報発信を続けています。発信を続けるうち、投稿にコメントを受け取ることも増えました。Facebook上でのやり取りを通じて、「小松菜の花を食べると美味しい」ことや、「キャベツに花が咲く」ことなど、農家にとって当たり前のことが消費者にとっては当たり前ではないのだと気付かされたそうです。

しっかりした仕事で美味しい野菜を

清水さんが野菜を栽培するうえで大切にしているのは、一つ一つの野菜それぞれにストーリー性を持たせて、お客さんが美味しいと思って食べてくれるようにすること。都市化・宅地化の進展とともに、国分寺では生産者が減少している一方で消費者は増加を続けています。これにより、清水さんは、農家が消費者から良くも悪くも注目を浴びる存在になりつつあると感じているそうです。そのため、食べ物を作ることを生業(なりわい)としている以上、しっかりとした人間となって仕事をしたいといいます。

丁寧に畑をご案内いただきました。

清水さんは、都市農家はまだまだ可能性を秘めているとおっしゃっていました。都市の農地の価値は、ただ野菜の生産を行うことには留まりません。畑をリフレッシュの場として活用したり、災害時の避難場所としたりといった、新しい形の利用を考えていくことによって、農を通じて地域を盛り上げる取り組みにさらなる可能性が生まれるのではないでしょうか。

まだ水滴がついた状態のキャベツ。直売所の野菜はとれたて新鮮です。
直売所にはお子さん連れのお母さんの姿も。地元の皆さんに愛されるお店です。
清水さんのお知り合いの農家さんのお野菜も販売。この日は並んでいたのはとちおとめ。
不思議な形ですね。カリフラワーの仲間のロマネスコという野菜です。

清水農園 プロフィール

住所:東京都国分寺市北町5-8
アクセス:西武国分寺線 鷹の台駅より徒歩10分
直売所営業時間:10:00~12:00、14:00~17:00