MARUGOTO REPORT 農業まるごとレポート

宅地化が進む中で何ができるか(小平市・にごりや農園)

宅地化の波

今回お話しを伺ったのは、にごりや農園の小野義雄さん。小野さんは大学を出てすぐ農業を始めました。代々農業をしていた家系に生まれたため、後を継ぐ形として就農しました。昭和59年頃から相続税が上昇し、住宅地が増え始めました。当時は「畑はいらない」という政府の考えから、肩身の狭い思いをしたそうです。畑の周りに住宅が増えたため、消毒作業を朝早くからするようになって大変だと小野さんは語ります。その理由は、洗濯物を干す時間帯と被らないようにするためです。

多種多様な品目

13反もの広大な農地では細かく分けると約60品目(たとえば同じ大根でも、青首だけでなく聖護院大根も育てるなど多品種を栽培)の野菜を育てています。ミニトマトや鞘インゲンなどの手間のかかる野菜は省いているそうです。新しい野菜も売れそうなものに限り育てています。珍しい野菜は消費者の方が数回ぐらいしか買ってくれないことが考えられます。加えて、それ以降の最盛期に買ってもらえない恐れもあります。以上の理由から、新しく珍しい野菜はあまり栽培していないそうです。野菜は直売(庭先直売)や農協の直売所をメインに販売しています。さらに、ジャガイモや玉ネギ、人参、大根、ブロッコリーなどは学校給食へ卸しています。近くの学校へは小野さん自ら卸しに行くそうです。他の学校には農協の方が持って行ってくださいます。小平市(JA東京むさし)では給食の3割を地場野菜が占め、農協が流通もやっています。朝7時までに小野さんが農協に野菜を持ち込めば、市内に幅広く野菜が回ります。にごりや農園では、ウドも栽培しています。ウドは直売ではさばききれないため、市場に出荷しています。

ハウスで育てられているトウモロコシ

学童農園

15年ほど前から学童農園を始めた小野さん。それによって、子どもたちだけでなく地域の人々の意識も変わってきているそうです。畑を斜めに突っ切って行く子どもや、畑へのゴミのポイ捨てが減りました。学童農園は小学校4年生の児童を対象とした活動です。4月に大根の種をまき、6月半ばに収穫します。その間の間引き作業も児童が責任をもって行います。児童それぞれが自分の大根を大切に育てます。自分で育てたものを持ち帰ることになるので、一生懸命に説明を聞き、丁寧に世話をします。その際、小野さんはほとんど手を出しません。児童たち自身で土に触れ、作物を育てることで、畑に対しての意識が変えてほしいと願っているからです。

1学期はいい加減に作業する児童が多いですが、2学期には自然としっかりやるようになるそうです。それぞれ作物に自分の名前をつけて育てるので、責任感が芽生えるようです。次第に作業にも慣れてくるため、作業時間も3分の1程度になります。

地元のものを加工品に

にごりや農園は近所の仲間同士で作物を加工品にしています。ジャムの種類としては、イチゴや夏ミカン、梨、キウイ、イチジク、ポポー、フュイジョアなどです。賞味期限は1年ほどです。消費者の方は地元意識が強いので、地元のものを原料にしていることをアピールすることで、売り上げが3倍になりました。加工所は都の補助を受けて行っています。市の補助も受けられるようになったそうです。あまり大量に作れないため、すぐ売れてしまいます。加工を業者に任せるためには何十キロもの作物が必要なので、自分の家に作業場を作り加工しています。このような方法で加工品を生産している所は、かなり珍しいです。

ぜひ、にごりや農園のジャムを買ってみてはいかかでしょうか。

加工場の様子

にごりや農園 プロフィール

奥田 晏子

アグリドットトーキョー編集部。津田塾大学学芸学部英文学科所属。「農業サークルぽてと」に所属しており、森田との縁からぽてともっとに参画。もともと、祖母が家庭菜園をしており、幼い頃から農業が生活の近くにあったことから都市農業にも興味を持ちました。都市農業を始めとして新たな農業の「カタチ」をもっと知っていきたいと考えています。ディズニー映画が昔から大好きで、ディズニーリゾートにもたびたび足を運んでいます。テーマパークの地図を覚えることに苦戦中。好きな野菜はトマト。

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